上代継獅子舞

Contents:志村隆昭 氏

解説

 当地における獅子舞の起源については明らかになっていません。
 伝説によれば、代継山東海寺(今は廃寺)の法院(住職)代継縫之助が、徳川の初期・寛文(1661~1672年)の頃、諸国を遍歴し、いずれかの地方よりかのを習得し、当地に伝えたのが始まりです。
 鎮守の祭典に天下泰平・五穀豊穣・悪疫退散を祈願し、仏法僧及び三宝荒神の家内守護を受けるために獅子舞を演舞したそうです。

 演舞は毎年9月19日を例祭としていましたが、昭和の初期に、農繁期の関係により9月29日に変更し、現在は月末の日曜日を祭り日にしています。

 現在の三頭の獅子は、前々からあったものですが、破損したことから、文久元年(1861年)7月に新調し、現在に至っています。

伝えによると、当部落の名主・近藤百次郎氏方土蔵に一時保管した際に、たまたま盗賊が押し入り、貴重品を物色中の箱を開けたところ、不思議にも唸り声を発し、盗賊を退散させたとか。

 午前中は、白滝神社、眞城寺、東海寺跡へ宮詣りします。午後からは、富士見台、下代継。夕方から夜にかけて千代里会館前で行っています。

宮詣り

1.打込み

2.とうる とーはい

3.おかざき

4.おおぎり(縫切り)

5.しょうでん

6.わがくに

 

以上、六切り

くずし(夜)の部

1.打込み

2.しゃっぎり

3.おおぎり(縫切り)

4.もみだし おかざき

5.打ち抜き

6.とびつき おかざき

7.骨なし

8.かたは

9.花がかり

10.牝獅子がくし

11.うぐいす(歌花鶯)

12.わが国

 

以上、十二切り


※おかざき・・愛知県岡崎
(徳川家康の生誕地として有名。
江戸時代から城下町、
東海道の宿場町として栄えていた。)

「しゃぎり(くづし)の唄」

まわれや車
車のごとくに引きまわさいな
京から下りた唐絵の屏風
ひとへにさらりと引きまわさいな

「おおぎりの唄」

1.一栗毛 二鹿毛(かげ) かわら毛 とら雲雀
 こうじ栗毛は 殿の召し馬
2.詣り来てこれの社(やんろ)を見渡せば
 西も東も鈴虫の声
3.朝日さす夕日かがやくこの寺に
 桜色なる稚子が七人

「牝獅子がくしの唄」

1.これのお庭へ朝霧がおりて
 そこで牝獅子が隠されたような
2.天竺ていの相染河原のはたにこそ
 まことにつきせぬ神なれば
 牝獅子牡獅子を結び合わせろ

「うぐいすの唄」

鶯が 金のこき穂を
くわへて来て
今年しゃ稲穂が
八穂で八石、八穂で八石
ささらが揃わぬ
いざや揃えろ

「わが国の唄」

わが国で雨が降りそで雲が立つ
おいとま申して
いざかいさいな
いざや揃へろ
いざや揃へろ

「わが国の唄」

1.たつきぎいの 後をはつれば、たつぎいの
 こうこのならさで、龍頭なさる
2.一つはねろや、きいりーいぎりす
 つづいて跳ねろや、萩の葉を千切れ
3.わが国で雨が降りそで、雲が起つ
 おいとま申して、いざかいさいな

「花ぶれ口上」

東西 とおざい
真っ平ごめんを蒙りまして
獅子・花の御礼申し上げます。
一金 ・・・円也
当所・・・様より獅子花代として
村方へくださある。
銘銘御礼申し上げべきはずには
御座候えども、獅子取り込みに
つき不調法なる私一人
まかり出で
村方にかわって花の御礼。

「千秋楽の詩」

千秋楽には 種をなぜ

万歳楽には 命をのべ

さあさくの声ぞ楽しむ

さあさくの声ぞ楽しむ


「唸る獅子頭(ししがしら)」

 昔、代継のある家の蔵に、毎年お祭りの時に行う獅子舞の獅子頭が三つしまわれていた頃のことです。
 ある晩、この蔵に盗人が入りました。あれこれ盗み出す物 を探しているうち、立派な木箱が目にとまりました。ふたを開けると、大切な物とみえて布で包んだ物がありました。ほどくと、よじれた角が二本ある赤塗りの 獅子頭が目をむいています。生きているようです。次の箱を開けると、今度は宝珠のついた、これも赤塗りの獅子頭が盗人を睨みつけています。
 ことによったら三つめも?
 と思って、残りの箱のふたをとると、角が二本ある赤塗りの獅子頭が現れました。盗人は、三回も獅子頭に睨まれてうす気味悪くなりましたが、
 あんな立派な獅子頭があるくらいだから、値うちものがあるにちがいない。
 と思い、獅子頭の入っている箱をそのままにして盗む物を探しまわっていると、どこから唸り声がしてきました。気のせいか、声は獅子頭の入っている箱の方から聞こえてくるようです。近よってみると、三つの獅子頭 が唸っていました。声がだんだん大きくなります。盗人は何も盗らないで蔵からとび出すと、
『獅子頭が唸った!獅子頭が唸った!』
と叫びながら逃げ去りました。

 盗人の声を聞いた家の人が外に出てみると、誰かが開けたのか蔵の戸が開いていて、なかから唸り声が聞こえてきました。おどろいて蔵に入ると、大事にしまって置く獅子頭を入れた箱三つとも開けられ、なかの獅子頭が唸っています。家の人は、蔵に盗人が入ったことを知り、何が盗まれた物があるかを調べました。何一つ盗まれた物はありません。そこで家の人は、獅子頭が盗人を唸りとばしたのだな。と思いました。
 その後、獅子頭が唸って盗人を追っぱらったという話が村中にひろがりました。村の人びとは、獅子頭の偉力に驚き、いままで以上に獅子頭を大事に扱うようになりました。

 

「秋川昔話 秋川市ところどころ」
 発行元 秋川市教育委員会
 第二刷 平成2年12月25日 より引用

 

「笛」

 笛は聞き覚えであるため、何年も練習して仲々自信をもって 吹ける程には覚えられない。獅子の練習は一年の内で五日か六日間位、それも先輩の傍らで、おどおどしながら吹いていた。或る笛の上手が、練習の始まる前 に、一時間早くおれの所に来い教えてやるからと云う事で毎晩通って教えてもらった。実にこまかい指の動きで笛穴を塞ぐ、同じ様にやれという。指の動きを見 ていて、そこは一つ足りない。そこは一つ多いといって教えてくれた。その通りに吹くと情景ぴったりの音色となる。この先輩が亡くなって、通夜の晩に笛を吹 こうということになり、一度納棺した笛を取り出して吹いた。

 

「秋川の昔の話」
発行者 秋川市教育委員会
発行日 平成4年12月25日 より引用

 

「坐ったままで獅子を舞う」

 夜の庭になると皆相当にお神酒が入り酔ってしまう。それで も庭をこなさなければならない。衣装をつけて庭に出るがもうふらふら、それでも笛がなれば舞を始める。さすがに芸達者同志、殆ど坐ったままで上半身の動き だけで、いかにもそれらしく、いやそれ以上に見せるから大したものだ。

 

「秋川の昔の話」
発行者 秋川市教育委員会
発行日 平成4年12月25日 より引用
 

「ザルをかぶって獅子舞」

 子供の頃、獅子舞の練習が始まると、よくその真似をした。獅子頭の代わりにそば食いざるをかぶり、風呂敷を水引代わりにし、鶏の羽根を拾ってきてかざりたて、何人かで獅子舞いの遊びをした。太鼓はないので腹太鼓をたたき笛は口で真似て舞い遊んだものである。

 

「秋川の昔の話」
発行者 秋川市教育委員会
発行日 平成4年12月25日 より引用